(1)事業の実施体制等
事業実施のために、共同生活援助事業所の職員(社会福祉士・精神保健福祉士)、精神科医、看護師などによる委員会を組織し、定期的に全8回にわたる協議を行いました。そのなかで、共同生活援助事業所における服薬アドヒアランスの支援状況にかんする調査の方法と結果の検討を行いました。また、服薬アドヒアランスにかかる心理教育のあり方について、地域の精神科医療機関や地域活動支援事業所との連携をとおして、そのモデルを構築しました。
これらの事業の普及・啓発にあたっては、服薬アドヒアランスにかかる先行的な取り組みを行っているスイス・チューリッヒ州の専門職と意見交換を行い、効果的なシンポジウムを実施する体制を築きました。
(2)事業の内容
調査研究として、東京都区部および愛知県名古屋市において、共同生活援助サービスと共同生活介護サービスを利用している精神障害者41人とその家族25人を対象としました。アンケート調査では、服薬アドヒアランスに影響をあたえる諸要因(地域の精神保健福祉制度、症状と治療経過、社会的・家族内な問題)について質問しました。ヒアリング調査では、抗精神病薬の服用の実態、薬物療法にたいする精神障害者と家族の理解、主治医とのコミュニケーションについて聴き取りました。
また、モデル事業では、調査研究で示された、共同生活援助における服薬指導と医療機関との連携の実態、薬物療法にたいする精神障害者と家族のニーズにもとづいて、共同生活援助サービスにおける、利用者の服薬アドヒアランスのマネジメントを実施しました。ここでは、東京都区部で共同生活援助サービスと共同生活介護サービスを利用している精神障害者17人に、計6回にわたる心理教育を実施しました。
(3)事業の成果等
この事業では、共同生活援助における服薬アドヒアランス支援状況に関する実態、薬物療法にたいする精神障害者と家族のニーズ、共同生活援助サービスにおける、利用者の服薬アドヒアランスへの介入の方法を検討しました。その成果について、共同生活援助サービス関係者、精神科医療機関関係者、精神障害者とその家族を対象としたシンポジウムを開催したところ、参加者は134人となり、地域生活における服薬アドヒアランスへの関心が高まりました。また、ウェブページを作成してインターネット上に掲載し、一般市民への普及・啓発を行いました。
なお、これらの取り組みについて、自治体の広報(1誌)、インターネット新聞(1紙)、専門雑誌(2誌)に掲載され、精神障害者の生活の質の向上に資する効果がうかがえるといった反響を受けています。
本助成事業に関する他の内容は下記を御覧下さい。
(独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」の助成事業)