ボローニャ便り 11月7日

11月就労3日目。8時40分頃到着。朝の日課は、皆でエスプレッソコーヒーを飲み仕事を始める準備をすること。そして、9時からミーテイング。今日は、一週間に一度の調理場の大掃除を行う日。調理場で重要な事は、衛生管理。どうして整理、掃除が必要かということをジョバンナさんが具体的に皆に説明する。分担をし、掃除開始。作業を行うにあたり、見守りが必要なメンバーもいるので、最初は特に見届ける。しばらくして、ジョバンナさんが、Nさんの新しい調理着と靴を購入しにNさんと私を専門店へ連れて行って下さった。イタリア側のメンバーの状況を共有。個々への理解とサポートが手厚い。チュタ―として働くメンバーの一人は、農園で収穫された大きなカボチャを使いクッキー作り、商品化をしている。

後半は、昨日、パーフェクトには作れなかったカルボナーラを調理。今日は、手順通りに出来たのに、麺が少しパサパサしている。まだ改善が必要。

皆で昼食をとり、後片づけをした後、以前、習得したティジェッレ(モデナを中心としたエミリア・ロマーニャ州の伝統的なパン)のレシピを再確認。

帰宅後、聖ペトローニオ教会の屋上へ昇ってみる。中世からの赤レンガの建物が続くボローニャの街が夕日に照らされている。散歩しながら、ナッザレーレ社会的協同組合が運営するインテリア、アクセサリー製品の素敵なショップを訪問。ここでもボローニャ精神保健局の利用者が就労をしている。

 

『生きているうちに少なくとも一度はボローニャでやるべき101のこと』というタイトルのガイドブックを書店で見つけた。ボローニャでやるべきことは、沢山ある。

ボローニャ便り 11月6日

11月就労2日目。今日のスケジュールは、農園から収穫された新鮮な野菜(ビート)を入れたボローニャ名物である卵入りのパスタ生地、そして、カルボナーラを作りです。ジョバンナさんが一人一人のメンバーをとても親切に指導。また、昨年度からこの就労プロジェクトへ参加しているイタリア側のメンバー(精神保健局利用者)は、現在、チュタ―(ティーチング・アシスタント)として、新しいメンバーの調理の技術面をサポートするまでに成長しており、まさしくこの就労プロジェクトの大きな実りとなっています。

仕事に集中出来ない、チームワークが作れないといった問題がメンバー個々に発生した時、スタッフの介入の基礎になるのは、本人の話をよく聞くこと。構築された関係性の中で、語り、聞き合う場面が時間の自然の流れと共にあるのが、エータベータという一つの社会的協同組合の大きな特徴であり、今日もそんな場面がありました。

今日のカルボナーラ作りでは、パスタをフライパンへ入れるタイミング、混ぜ方を失敗。パーフェクトに学ぶ為に“明日、もう一度、作ってみましょう。”という事になりました。わからないことがあれば、直ぐに確認し、確認し合える環境は、日本から来たばかりのNさんにとっても安心し、学び働ける環境です。

 

 

夕方は、ドネガーニ先生(ボローニャ精神保健元局長)と共にボローニャ市庁舎にて開幕した“ボローニャの記録-68年の痕跡”展を見学。この展覧会は、1968年にボローニャで起きた様々な社会運動(学生、労働者、女性運動など)の記録をテーマ別に展示。“精神医学”の改革運動をテーマにしたセクションもあり、現在のボローニャ精神保健局の建物が公立ロンカーティ精神病院だった時代の運動が紹介されています。その中には、1967年、フランコ・バザーリアがロンカーティ精神病院の院長選出へ志願、しかし、彼の“反施設化”の立場、また哲学的な思考が問題視され、院長には、選出されなかった事実を示す貴重な資料なども展示されています。

展示見学後は、聖ステファノ教会近くのバールへ。“人は、いつから、病人と呼ばれるようになるのか? 一度、精神障害の病名がついてしまったら、その人は、ずっと病気なのですか?”という質問がNさんからあり、ドネガーニ先生に答えて頂き、いろいろなことを共に考える時間がゆったりと流れました。

ボローニャ便り 11月5日

2017年5月より、東京ソテリア、ボローニャ精神保健局、エータベータ社会的協同組合との連携による日本・イタリア共同就労支援プロジェクトの2018年11月期が本日よりスタートしました。

今回、就労継続支援事A型業所ソテリアエンプロイメントのメンバーで、このプロジェクトの為に渡伊したNさんと支援員である私は、ボローニャ中心街にあるアパートで共同生活を送りながら、この一か月間、エータベータ社会的協同組合(http://www.etabeta.coop/)にて、調理を学びながら、イタリアのメンバーと共に協働していきます。

エータベータでの就業は、朝の9時より。Nさんにとって、エータベータでの就業初日は、まずは、自己紹介から。イタリア側のメンバーは、このプロジェクトの責任者でもあるエータベータ副代表のジョバンナさん、17年もエータベータに勤める愛情深く、パスタ打ちの名人ロザンナさん、ボローニャ精神保健局の利用者5名です。そして、プロ仕様の調理場、有機栽培による巨大な農園、イベントスペース、木工やガラス工房を見学。その後は、ジョバンナさんとNさんと共にこの一か月の間、エータベータでの学ぶべき課題やスケジュールを確認。調理技術習得のみならず、日本と異なる中でのコミュニケーションの大切さについての話し合いもしました。

後半の時間では、早速、イタリア側のメンバーと共に作業。農園で収穫された野菜(ビート)の入った手打ちパスタ (ストロッツァプレーティ)を作り。気候や様々な条件が異なるイタリアと日本間で、エータベータで学んだレシピを日本の現場で調理へ携わっているソテリアエンプロイメントのメンバーへ伝えていくという課題は、Nさんにとって今回、大きな任務となっていきますが、彼女の初日の感想は、“エータベータがプロフェッショナルな就労の場であり、尚且つ、皆が楽しく働ける場所であること”。感覚や経験が求められる調理技術を限られた時間の中でいかに伝えていくかということは、エータベータ側にとっても決して簡単なことではありませんが、メンバー全体と個々のバランスをとりながらプロフェッショナルを育てていく大きな配慮がそこには、存在しています。ボローニャでの社会的協同組合での就労、そして、日常の生活を通しての大きな学びへの期待に満ちた日となりました。

 

【9月18日】ETA BETA 

【9月18日】ETA BETA

 

さて、

いよいよ“明日”帰国となりました。

とは言え、研修は、修行は、明日もあるので「最終日」終えました。とはなりません!

 

そして、今日はクタクタ…

それは、今日の研修で、というよりは荷造りで。

そして、思うのは、「一カ月」暮らしをするということは、これは結構大変なことなんだということです。こちらに来たばかりの頃は、「一カ月ある」だったのですが、経ってみると「もう一カ月!」。

暮らしの場所を変えるっていうことの大きさを、感じています。

(そう考えると、精神科って入院が1カ月だったり、3カ月だったり、、…数年だったりしていますが、この“住まいが変わること”の大変さという観点でてると…それは、その人に大きな影響を与える…って当たり前だな…って思います。疲れが出て当然だな、と)

 

・・・

 

そして今朝ですが、

今朝は、学生ボランティアの方と一緒の通勤だったのですが…油断しました。バス停。目の前にバスが来て、「これだね」なんて話をして、僕は、カバンから定期券を取り出して…いたら、バスが行ってしまった!(ぎりぎりよりも、一本早いバスに乗っているんで遅刻ではなく、その意味では安心していたのですが…) バスは、さっと扉を閉めると行ってしまったのです…

完全に油断していました。

そして、そうなると一人の時は緊張して、神経張っているんだな…それが、サポートがあるって思うと、緊張緩むな…そして、やっぱり疲れも出てきているな…と思いました。

(そして、乗ったバスに、ETA BETAの方が乗って来られたので、安心しましたが…)

 

と、みていくと、「やっぱり、一人じゃない」ということ、「サポートがある」ということ、特に「コミュニケーションに関してのサポートがある」ということは、ほんと人を安心させるものなんだなって思います。ボローニャマラソン走った時も思ったのですが、

「コミュニケーションがある」ということは、ほんと、気持ちを楽にさせてくれますね!

 

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そして、ETA BETA。

今日からまた新しい研修生が来ていました。そして、いつもの人がいなかった… そんな風にして、また新鮮な日が始まりました。

今日は、3種類の生地を作るとのこと。

そして、卵は使わない…

 

また、新しいことが始まります。

ボローニャのパスタと言えば、卵入り! というイメージが出来ていましたが、卵が入らない生地。作ってみると、、、最初は違いが判りませんでした。が、生地を寝かせてから延ばすとき…いつもと違う感触。

「手にくっつくから気を付けて」

手に(いつもより)くっつくのです。でも、なんだか楽しそう。そして、僕たちも、楽しく作業をしていたと思います。先輩の同僚からは、

「ここは、小麦粉をたして」

とか、アドバイスを貰いながら、進めてく。

 

そして、時間を進めて…記事をカットしていったのですが、

見本はあるのですが、結構みんな、それぞれの大きさで。

これ、焼くときにお塩をふるのですが、それも均一という感じではなく(でも、特に意識して不均等にしている訳ではないのです…)、それそれなのです。

が、焼き上がりを食べてみると…

 

これが、おいしい。

 

みんな同じ形。

みんな同じ塩加減。

 

それが、いいって(…ましてや、商品ならば)思っていましたが、

これはこれでアリだな。違いがあるから、飽きが来ないし(…それはもしかしたら、「フルーツを食べるときの喜び」にも似ていて、次はどんなだろう?次はどう?って、食べる楽しみもあって)。

(焼き上がったのは、塩味のビスケットのようなものでした)

 

それぞれが、

 

違った形、

違う塩加減。

 

それが、ほんと楽しいし、

また一つ、また一つって手が出る僕がいました。

そして、これは、これこそが「手作りのよさ」ってことなのかもな…

そこで僕はボランティアの方に聴いたのですが…

 

「おいしいけれども、これ日本で売れるかな?」

 

学生さんも、

「どうでしょう…?」

と。

 

大切なのは、物語を共有することなのかな…

あるいは、

前にも書いた、

キャンプの食事が美味しいのはなぜなのか?

想いを込めて作られた食事が美味しいのはなぜなのか?

 

そこに、「おいしい料理」のヒントがあるって、

最終日前日にまた、たどり着きました。

 

…きっと、計りや、時計で計れない何かがあるんです。

 

 

増川ねてる