【9月5日】ボローニャ修行の3日目、【9月6日】4日目

【9月5日】ボローニャ修行の3日目(ショートパスタと演劇)

少年たちとの時間も3日目。

僕たちは、だいぶ慣れてきていた。僕は、みんなともっと仲良くなりたいって思って、家から「ポン飴」を持って行っていました。ポン飴っていうのは、片手で開けられる飴で…。どうぞ、コンビニで探してみて下さい。面白いから!

 

「パスタづくり」

これは、もう慣れることが大切なんです。

 

そんな言葉から始まった一日でした。先ずは、月曜日にやったことの復習です。小麦粉100に対して、玉子が一つ…

そして、粉を計って、それを台の上にあけて…。その粉で先ずは土手を作るんです。まるで、「もんじゃ焼」の最初みたいに。そして、その真ん中に玉子を入れて。それを、フォークで混ぜ合わせていく…

 

 

僕は、ここで泡だて器か、お箸があったらな…と思うのですが、

ああ、そうか、箸ではなくて、

 

フォークなんだ!!!

 

と、妙に感心しました。日本では箸を使うように、イタリアではフォーク!!それからは、フォークで玉子を溶くことが不自然ではなくなりました。それからは、一回やった過程…それを、先生を代えてやっていく。

これが、また、いい経験になりました。

 

正確な数字じゃない。正確な形ではない、

 

でも、目的としていることは、一緒なんだ。

そして、そんな中、学ぶことは、「自分の性能」「自分の感覚」「自分の考え方」

でした。「よいとか悪いとかの…それ以前」です。それ以前に、僕たちは「自分について学んでいる」。そんな風に思いました。目的は同じ。そこに行くために、「先ずは、自分のことを知ろう」「世界に触れることで、出会う自分を知っていくこと」 先ずはそこだと思った時間でした。常に、自分の感覚を使ってね、、、と言われているよな時間でした。そして、僕らは、自分たちで作ったパスタを食べて、その日を終えました。

 

 

そして、僕たちはいったん帰宅。

そして、二日ぶりのアレーナデルソーレ。

この日は、いつもお世話になっている精神科医のドネガニ先生も一緒でした。会場の受付に着くとドネガニ先生がいて…みんなと、笑顔笑顔の挨拶で。今日から、またバカンス帰りなのでしょうか、人が増えていて…

「ねてる、前にも会ったね、覚えているよ」とか、言われるとやっぱり、嬉しくて。

稽古場に着くと、先ずは、日本についての質問、確認。僕たち日本の方も、確認事項。

 

みんな、床に座るのって平気?

やっぱ椅子が必要?

 

公演、こんな企画があるんだけれども、具体的には何をしましょうか?

 

具体的な話をしてました。

そして、それがひと段落すると…

 

一昨日と同じように、台本読み。

 

そこでは、また、すぐに「舞台役者」に“豹変”するみんながいて。

ほんと、この早変わり、

この“まるで変身”の見事さ。

 

みんながほーーーんと、「自分」ってものを持っていて、

 

それに根ざしているから、

 

舞台が出現したら、みんなもその持ち味で“出現する”んだ

 

って、

それが、とっても心地よい…

 

みなさん、

10月のアルテサルーテの公演。

 

乞うご期待です!!

 


【9月6日】ボローニャ修行の4日目(ショートパスタと演劇)

朝、いつもの時間バスに乗ると、いつも同じバスに乗っている人たちがいて…そのうちの一人の人は降りるバス停が一緒で。

今日は、初めてその人と会釈して…バス停で、それぞれの道を歩いて、それぞれの場所へ(僕たちは、EAT BETAへ)。

いつものように、朝のカフェを入れてもらって…そうしていると、いつものようにパヌスの少年たちがやって来て。

プロジェクトが今週で終わり、僕(たち)の実習が今週は今日までだから、彼らに会えるのは、今日までで。

朝から、ポン飴を分け合って、そして休憩時間には、日本から持ってきたポストカードを渡した今日…

 

学んだことは、

「ねてる、一人ひとり違っているから、作られるパスタの味も、

一人ひとり違っているんだよ」

ということでした。

今日は、マンツーマンでの指導だったので、特に沢山会話をしながらの実習だったのですが、

学んだのは、、

 

「一人ひとり違っているから、作られるパスタの味も、

一人ひとり違っているんだよ」

 

ということ。

違っているを前提にしているから、

違うお皿を食べるときに、ワクワクする!

それは、ピッツァの時にも感じたことだったのですが、それを言葉で言われると…余計に定着するもので。

そして、違っているを前提にしているから、反対に、「一緒にする」「誰かに合わせる」も、きっと可能なんだな…

 

って、思いました。

そして!

今日、僕が作った「蝶々のパスタ」は、今日は食べることが出来なかったけれども、それも「一つの味」になったんだろうなって思います。そして、僕は、パヌスの少年たちが作ったクッキーを美味しく頂きました。作った人も嬉しいし、貰った人も嬉しいのは、一つひとつが違っているから…

 

とっても、貴重なんだ

 

って、感動している僕がいました。

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そして、

アレーナデルソーレへ。

今日は、栗原さんが打ち合わせで最初からは来れないということで、一人で劇場へ。案の定、一人で稽古場に着けない!!

でも、大丈夫。事務室にはたどり着けたから、そこで知っている人の顔があったから。

そしたら、その人が、「連れていってあげるよ」

って言ってくれて。

 

見慣れた場所に到着したら、みんながいて。

僕は少し遅れたけれども、それを咎める人はなく…

 

そうなんだよな。

その辺の感覚なんだよな…

 

みんなの合意(と思われているもの?)が破られた(?)とき、

それを特に怒るわけではなく、

そんな人にも何かの事情があったんだって(そんなに意識するでもなく)思ってて、

仲間に入れていく感じ。

(…そして、僕より到着が遅くなっている人も、いました…です)

 

そして、始まったのは、

今までとは違っていて、「歌の練習」。

僕は、「ねてるは、歌は歌えるの?」って前から聞かれていたから、俄然力が入って…覚え立てのイタリア語で歌ってみたら、監督に、

「ねてる、ここでは、ねてるはいいから…」って止められて。

(とは言え、栗原さんがいなかったので、正確にはわからないのですが…)

 

少し、しょんぼりしたけれども、また立て直して。

ここは、僕も声出していいはずだ!

というところで歌って来ました。

 

帰り道、

「ねてるー、よかったよ」

って。

それが、どのくらいの「パルフェクト」なのかはわかりませんが、

嬉しかったです!!

 

やってみること、

やってみたことを、そうやって見ていてくれる人がいるっていいですね。たとえ、今は、やんないで、言われたとしても(笑)

 

よかったよ、

言ってくれる人が最後に現れるって、いいですね。

 

 

 

 

 

「マラー/サド」台本

(アイキャッチ画像は、アルテ・エ・サルーテ劇団が所属するエミリア・ロマーニャ演劇財団が運営するアレーナ・デル・ソーレ劇場。稽古もこの劇場内で行われています。)

増川ねてる

 

【9月3日】ボローニャ修行の初日、【9月4日】2日目

【9月3日】ボローニャ、修行の初日(タリアテッレと演劇)

みなさん、こんにちは。

東京ソテリア・ピアサポーター増川ねてるです。

今、僕は、イタリアはボローニャに来ています。

イタリア入りは、8月24日(金曜日)からでしたので、約一週間の準備を経ての実習開始です。

(準備の時間で何をしていたかについてはまたいつか書きたいと思いますが、簡単にいうとイタリア語のレッスンだったり、道路を覚えることだったりしていました)

朝は、バス停で同僚の栗原さん(イタリア生活18年の経験を持つ同僚です)と待ち合わせ。一週間の準備があったので、バス停までは何の苦労もなく行けました。そして、午前の修行は、「ボローニャ料理」を学ぶべく「ETA BETA社会協同組合」です。何度か訪れたことがある場所で、加えて僕はこの実習のために練習で一回バスで行ってもいます。なので、スムーズに…と言いたいところですが、イタリアでは「バカンス」の時期だったため、バスの時間が違っていたりして…ドキドキの通勤でした。

そして、着くといつもの笑顔がそこにはあって…

「Ciao ちゃお」

「Ciao, come stai?ちゃお。こめすたい?」

いつもの挨拶がありました。

そして、今回の目的を伝えていると…早速現在進行中のプログラムが始まっていき、、、あまり打ち合わせできずに、一日のスタート。

この辺が、「イタリア的だな…実践的だな」思いながら早速のパスタ作りが始まりました。僕が一緒に仕事をすることになったのは、「パヌス」という、パン作りを10代の若者に教えていくプロジェクトのメンバーたちです。

「Ragazzi らがっつぇ(少年たち)」と呼ばれている人たちが同僚。紹介してもらっているとき…ほんと、笑顔が繋がっていく感じ…でも、お互いに緊張していて。そんなスタート。

「小麦粉100グラムに対して、玉子は一個。(でも、玉子は大きさが違っているから、その分は水で調整ね!)」

日本の感覚でいうと、玉子もグラムで考えたいところですが、その辺がまた、実践的だな…と思っていました。そして、「手で覚えてね」ということでした。

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そして、僕(たち)は、いったん帰宅して、

アルテサルーテ劇団へ、演劇の稽古へ!!(今回の渡伊の一つの目玉がこの《劇団への入団》。10月に日本公演をするのです!!)

栗原さんと劇場の前合流し、劇場の受付で担当の方を呼んで貰って、みんなのいるところに到着すると…

「Ciao ちゃお」

「Ciao、come stai?ちゃお、こめすたい?」

「Va bene. e tu? ば べーね。えとぅ?」

ここでも笑顔の交流… そして、この稽古初日の前に、数回僕(たち)は劇団員の人たちと会っていたので、打ち解けるのに時間はそんなにかからないでいました。

そして、メンバーがぱわぱらぱらってやって来て…

そして、バカンス明けの感じで、「最近どう?」なんてやり取りを(きっと)していて・・・

 

日本に行くのに心配事ありますか?

すし…生の魚って食べられますか?

 

日本って、タバコ吸うの結構吸い方結構厳しいですよ。

電車・バス乗るときは、一列に並びます。並ばないと乗れなかったりするんだよ。

 

そんな注意事項を共有し…

 

それから、配役の発表!!

(なんと、僕も、役名を貰いました!!! びっくりでした)

 

そして、台本読み合わせ。

 

えっ

 

すごい表現力!!

みんなから出てくる“熱”が、それまで会話していた時のみんなと違っている…

 

本物だから伝わるのか?

伝わるものを本物と呼ぶのか?

 

すごい、すごい迫力でした。

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【9月4日】ボローニャ修行の2日目(ピッツァ)

この日、この日、この日のために、僕(たち)は練習してきたのでした。イタリア語をほとんど理解できない(それに加えて、地理がなかなか頭に入ってこない…言語性IQは普通にあるけど、動作性IQが少し難しい…)僕が一人でETA BETAにバスで行く! 練習。(火曜日は、イタリア語が出来て、ボローニャにも慣れている同僚の栗原さんがいない日なのです…) それで、僕たちは練習をしてきていたのです。実習が始まる、その前の週に。

 

ところが!

「かずみ(栗原さんはファーストネームで“かずみ”って呼ばれています)がいないなら、朝、家の近くに迎えに行ってあげるよ」

と、言って貰い…

「あ、そうですか。ではお願いします」

なんて、こちらも言ってしまって… 朝、迎えに来ていただきました。ただし!

朝、本当に合流できるんだろうか?

別の不安を僕は持つことになってしまっていましたが…

 

そして、朝、

待ち合わせ場所に行くと…

やっぱり、まだだったので、、僕は、バールに入って、覚えたてのイタリア語を使ってみました。

 

「Un cappucino. E’ questo, per favore.  うん かぷちーの、え くえすと ぷるふぁぼーれ」

 

そして、食べたブリオッシュの美味しいこと…

ゆっくり座って食べようか…

 

思ったら、

「ねてるーーー」 ジョアンナさんがお店に入って来て言いました。

僕は、急いで、席を立ち、、、

ジョアンナさんの後についていき、車に乗りました。

 

そして、パヌスの人たちを一緒に迎えに行き…

 

ETA BETAに到着すると…

背の高い、かっこいい男性がいて…

「ピッツァ職人です!」とのこと。

前日に、「明日は、ピッツァやろうね」言われていたので、「この人が今日の先生なんだ!」って、感動しながら思いました。

 

そして、打ち合わせ。

通訳をしてくれる栗原さんがいないのを配慮してくださり、英語ができる人に、「イタリア語→英」の通訳をジョアンナさんはお願いすると、今日の打ち合わせが始まりました。

そして、僕は、ピッツァをパヌスの「少年たち」と作ることになり…

 

教え方が、また面白い。

「言葉、いいよ、わからなくても、僕たちは「手」で語り合おう」

挨拶の通り、

これが00っていう小麦粉。手で触って、匂いを嗅いでね。

これが、全粒分。手で触って、匂いを嗅いでね。

昨日の、パスタの生地作りと同様、

グラムや、知識のことよりも、「感覚」。頭で覚えるというよりは、感覚で覚えてね。という感じ。

ピッツァを焼くとき、生地が破れてしまったときも、

「こういうことってあるんだよ。どうするか?って??

こうやって、穴をふさげばいい」

職人さんは、笑って言いました。

 

そして、

どうにもならない穴があいた生地が出来た時…

「うーーーん、これは、ピッツァにはならないな」

と具材は載せずに、そのまま窯へ。

そういうところも、ほんと学びがおっきな一日でした。

大切なことは、「ピッツァが完成すること」なんだと思いました。そこには、「プロセスが大事、結果はそれぞれだから…」という昨今の流行り(?)とはちょっと違う、センスがあったと思います。

 

そして、

その職人さんが言っていた言葉が、とっても残っています。

 

「私にとって、一番大切なことはね、作ることを楽しむ! これが、一番大事なんだよ」

 

これが、秘訣か。

ここから動くから、きっとうまくいく。

上手くいくように、体も、頭も使うんだって、学んだ一日でした。

増川ねてる

日伊共同就労支援プロジェクト 第2年度スタート

東京ソテリア、ボローニャAUSL(地域保健連合公社)精神保健局、社会的協同組合エータベータの連携による日伊共同就労支援プロジェクトの第2年度が5月よりスタートしました。

このプロジェクトは、主に就労継続支援A型 東京ソテリアエンプロイメントのメンバーと東京ソテリアスタッフ(支援員)がイタリア、ボローニャで生活しながら、障がい者や社会的弱者の就労の場である社会的協同組合にて、現地の精神保健局の利用者と共に職業訓練と就労を実施するという二つの国の壁を超えた画期的なプロジェクトです。

イタリアは、“精神病院のない国”として知られていますが、それでは、どのように地域精神保健サービスが機能しているのでしょうか? 「当事者」や「精神障害者」を個のアイデンティティとして優先せず、社会の中の「労働者」として主体を確立していく、イタリアの精神保健の歴史と現在を知る一つの鍵となるのが、社会的協同組合での働き方です。

 エータベータ社会的協同組合

ボローニャは、ヨーロッパ最古の大学が現存し、赤い煉瓦の建造物の中から聳え立つ塔を特徴とした中世の時代からの学術・商業都市です。

エータベータ社会的協同組合の前身は、1999年に現在の代表とその家族、彼らの周りのアーティスト達によって立ち上げられたアソシエーションでした。その後、障がい者やその他の社会的弱者の雇用措置を規定する法律381号に基づき、2006年、社会的協同組合として創立されました。現在は、調理、農業、木工・ガラス製品、クリーニングサービス、出版、社会・文化的イベントオーガナイズ等、多岐に渡る事業を展開しています。各事業において、専門技術指導員、もしくは、ボローニャ精神保健局-依存症局の就労支援サービスによる職業訓練期間を経て、雇用された経験豊富な組合員達が技術指導の役目を担っています。

私達の就労プロジェクトの現場であるエータベータ社会的協同組合のスパツィオ・バッティラーメと呼ばれる広大な敷地内の空間構成と機能は、中世ヨーロッパの修道院特有の自給自足と瞑想の世界からインスタレーションを得ているそうです。しかし、決して社会から孤立した場所ではなく、毎日、ここにいると人と物(生産物)、そして文化が絶え間なく流通していることを肌で感じます。      行政、大学、企業とも連携し、一般市場の中で生産価値を生み出し、同時に社会的なメッセージを発信しています。       他者とは異なる個々それぞれが、プロフェショナルとして働くこと、それがエータベータ社会的協同組合のメッセージです。

共に働き、共に食事をすること 

日伊就労プロジェクトは、調理を中心に行われています。毎朝、両国のメンバーは、8:30過ぎにプロ仕様の厨房に入り、着替え等の準備を行いますが、9:00から始まる朝のミーティングの前には、皆でエスプレッソコーヒーを飲むのが日課です。

それから、実際の作業へと移っていきますが、調理の材料の中心となるのが、敷地内の農園で収穫された無農薬の野菜であり、出来上がった料理が盛り付けられるのは、工房で     作られたリサイクルガラスのお皿です。魅力的なのは、生と再生が事業として一つの空間で循環しているところです。

この一年、東京ソテリアからこのプロジェクトへ参加したメンバーは、タリアテッレ、ラザニア、ボローニャ風ミートソース、フォカッチャ・・・等の沢山のレシピを学び、日本へそれらの経験を持ち帰りましたが、調理技術の学びだけではなく、日伊のメンバー間では、大陸、そして、言語や文化の違いを超えて共に働くこと、そこで生まれる共有を大切にしています。食は、一つの儀礼であり、美、そして、文化の根底であるという観点から、昼食の時は、一つのテーブルを皆で囲み、一緒に食事をします。

  

多目的機能をもつスパテツィオ・バッティラーメは、頻繁に行政や民間主催のカンファレンスやイベントが開催されます。自分達が社会に受け入れてもらうのではなく、自分達が市民、つまり社会を迎え入れ、歓待する。このような連帯と食を美として捉える考え方を根源とした時に”働き方“がどのように変わっていくのでしょうか?

この日伊就労プロジェクトには、多様な側面から見る課題と成果があります。今年度の展開を通して、個々のそれぞれの立場の経験と考察、そして、社会の中での共有のの契機となる事を期待します。